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切削加工でよくある不良の原因と対策|発注前に知っておきたい現場の話
2026.05.27
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「図面通りに作ったはずなのに」が一番困る
切削加工の不良で最もやっかいなのは、加工業者側が「図面通りに作った」と言っているのに、発注側が「これは違う」と感じるケースです。
寸法は公差内に収まっている。表面粗さも指定通り。でも組み付けてみたら合わない。あるいは、量産の途中からバラツキが出始めた。こういったトラブルは、原因の特定が難しく、対応に時間がかかることが多いです。
切削加工の不良には、発生しやすいパターンがあります。原因を知っておくことで、発注前の設計段階で防げるものも少なくありません。今回は、現場でよく見る不良の種類と原因、そして対策をお伝えします。
寸法不良
どんな不良か
加工後の寸法が図面の公差から外れている状態です。外径・内径・長さ・穴位置など、測定できる全ての寸法が対象になります。
主な原因
熱変位: 切削加工では加工中に摩擦熱が発生し、素材が膨張します。加工中と常温時で寸法が変わるため、熱変位を考慮せずに加工すると、冷却後に寸法が公差から外れることがあります。特に銅やアルミは熱膨張率が高く、精密加工では熱変位の管理が重要です。
工具の摩耗: 工具が摩耗すると切れ味が落ち、加工寸法がずれていきます。量産の途中からバラツキが出始める場合、工具の摩耗が原因であることが多いです。工具の交換タイミングを適切に管理することで防げます。
チャッキングの誤差: ワークを固定する際の締め付け方によって、加工中にワークがわずかにずれることがあります。特に複数工程にまたがる加工では、工程間の積み換えで芯ズレが生じることがあります。
対策
精密部品では、加工後に三次元測定機・画像測定器などで全数検査を行い、数値で確認することが基本です。量産品では抜き取り検査のタイミングと頻度を適切に設定し、工具の摩耗による寸法変化を早期に検知する体制が必要です。
表面粗さ不良
どんな不良か
加工面の粗さが図面の指定値を超えている状態です。光学部品・半導体関連部品・熱交換器の接触面など、表面品質が製品性能に直結する部品では特に重要です。
主な原因
切削条件のミス: 切削速度・送り量・切込み量のバランスが悪いと、加工面が荒れます。素材ごとに最適な切削条件は異なるため、条件出しの精度が表面品質に大きく影響します。
工具の状態: 工具の刃先が摩耗・欠けていると、加工面に引っかき傷や凹凸が生じます。特に銅のように粘りが強く溶着が起きやすい素材では、工具の状態管理が表面品質に直結します。
びびり振動: 工具や素材が加工中に振動する「びびり」が発生すると、加工面に規則的な波模様が生じます。工具の突き出し量・切削条件・ワークの固定方法を見直すことで改善できます。
対策
素材ごとの切削条件を最適化し、仕上げ加工用の専用工具を使用することが基本です。要求される表面粗さの値を明確に図面に記載し、加工業者と事前に確認することも重要です。「なるべく綺麗に」という指示では、業者によって解釈が異なります。Ra・Rz・Ryなど、具体的な数値で指定することをおすすめします。
バリの発生
どんな不良か
加工後の部品の端面・穴の入口・出口などに、薄い金属の突起(バリ)が残っている状態です。医療機器・半導体関連・精密機器では、ミクロン単位のバリ一つが製品の故障原因になることがあります。
主な原因
バリは、切削加工において素材が切断される際に金属が引きちぎられることで発生します。アルミニウムは特にバリが発生しやすい素材です。工具の鋭利さ・切削速度・加工パスの設計が発生量に影響します。
対策
バリの発生を物理的に抑える「逃げ」の加工パスを工程に組み込むことが有効です。加工の順序や工具の進入角度を工夫することで、バリの発生箇所と量をコントロールできます。また、最終工程でのバリ取り検査を徹底することで、製品への混入を防ぎます。
溶着(構成刃先)による不良
どんな不良か
切削時の摩擦熱によって素材の一部が溶けて刃先にこびりつく「溶着」が発生すると、加工面が荒れたり、溶着した部分が剥がれて加工面に引っかき傷がつくことがあります。銅を加工する現場では特によく起きる不良です。
主な原因
銅・アルミニウムなど、粘りが強く熱伝導率の高い非鉄金属は溶着が起きやすい素材です。刃先の鋭利さが失われていたり、切削速度が適切でなかったりすると、溶着のリスクが高まります。
京田辺工場での加工経験から言うと、銅の切削は「油の中でミクロン単位の精度を出す」作業です。加工油が飛び交う中で、工具の状態・切削条件・クーラントの供給を同時に管理しながら進めています。一見地味な現場ですが、溶着を防ぐための判断は常に続いています。
対策
溶着を防ぐためには、鋭利な刃先を維持した専用工具の使用・適切な切削速度の設定・クーラントの最適化が必要です。素材ごとに工具の選定と切削条件を変えることが、安定した加工面品質につながります。
不良が起きたときの対処法
まず原因を特定する
不良が発生した場合、感情的に「やり直してほしい」という前に、まず原因を特定することが重要です。原因がわからないまま再加工しても、同じ不良が再発する可能性が高いからです。
不良品のサンプルを保管しておき、加工業者と一緒に原因を分析することが再発防止につながります。「どの工程で・何が原因で・どのくらいの頻度で発生しているか」を整理した上で対処することが重要です。
図面・仕様の見直しも視野に
不良の原因が、加工業者の技術力ではなく図面の仕様にある場合があります。
例えば、現在の設備・工具では実現が難しい公差を要求している。素材の特性上、指定された表面粗さを安定して出すことが困難。こういったケースでは、加工業者からのフィードバックをもとに図面・仕様の見直しを検討することも選択肢のひとつです。
「図面通りに作れないのは業者の問題」と決めつける前に、設計側と加工側で一緒に原因を掘り下げることが、長期的な品質安定につながります。
発注前に確認できることがある
不良が起きてから対処するより、発注前に防げることも多くあります。
新規部品の加工を依頼する前に、加工業者に図面を見てもらい「この形状・この素材・この公差で安定して加工できるか」を確認することが有効です。加工業者の目線から「ここは難しい」「この公差は緩めた方がコストが下がり品質も安定する」といったフィードバックが得られることがあります。
辰己屋金属では、図面段階からの相談を受け付けています。「この加工、本当にできるか確認したい」「試作で問題が出たので原因を一緒に考えてほしい」という段階からでも対応しています。材料商社としての素材知識と、1985年から積み上げてきた切削加工の経験を合わせて、現場目線でお答えします。
まとめ
切削加工でよくある不良とその原因をまとめます。
- 寸法不良: 熱変位・工具摩耗・チャッキング誤差が主な原因。全数検査と工具管理が基本の対策
- 表面粗さ不良: 切削条件・工具状態・びびり振動が原因。図面に具体的な数値で指定することが重要
- バリ: アルミなど特定素材で発生しやすい。加工パスの工夫と最終検査の徹底で防ぐ
- 溶着: 銅など粘りの強い非鉄金属で起きやすい。専用工具と切削条件の最適化が対策
- 不良が起きたら原因特定を優先し、図面・仕様の見直しも視野に入れる
- 発注前に加工業者に図面を確認してもらうことで、不良を未然に防げることがある
私たちが現場で見てきた失敗パターンと、外注先を選ぶ上で大切だと思うポイントをまとめました。切削加工の不良でお困りのことがあれば、辰己屋金属にご相談ください。
辰己屋金属株式会社 代表取締役社長 奥出真通
辰己屋金属株式会社
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